Glorious Day 〜日本晴れ〜
興味も無いラジオがずいぶんとテンションを上げてきている。
なにかのカウントが始まり、その瞬間に日付が変わった。
「はぁ……。何やってんだろ、私」
無論、受験勉強だ。
教科書に授業で取ったノート、受験用に別に要点だけをまとめたノート、参考書等々。
もう12年目になるこの学習机の上は紙だらけ。
こんな活字を詰め込んで入れる大学なんて……。
「はぁ……」
本日初めてのため息をつき、参考書の内容を数行写す。
中途半端な位置でシャープペンの先は止まり、巧みな指さばきでくるくると回される。
本来の用途で使われていない哀れなシャープペンは、回している本人に半眼で睨み付けられていた。
左手で自身の顎を支え、自分で回しているシャープペンを眺める。
「…………」
ふいに、手が止まる。
右手はシャープペンを携えたまま、目の前のコンポのリモコンへ。
音量を上げるボタンを数回押す。
「やっぱいいなぁ……」
好きなアーティストの曲がかかっている。
今度は両手で顎を支え、目の前のスピーカーが奏でる和音に耳を傾ける。
目を瞑り、その曲だけを五感で感じていると夢の時間は短いと言わんばかりに音量が絞られ、最後には消えていった。
その次には気象予報。
この夜が明けた時の天気を気象予報士が伝えている。
「……雨が降ろうが槍が降ろうが学校に行くのはどうせ変わらないんだから……」
スピーカーは睨まれ、リモコンのボタンによって声を落とす。
『……明日は全国的に快晴で、すっきりとした日本晴れになるでしょう』
若い女性の声はそう断言した。
日本晴れ。
どうせこの夜が明けても学校へ行くのは変わりないのだから、雨よりはずっとまし。
今日の夜はこれだけ頑張ったんだから、もちろん、私は受かるはず。
気象予報士のお姉さん、信じてるよ。
この日は私のとても大切な日……なんだから。